美男子の恋事情!
「悪い、海生。俺、急いで行かなきゃいけないとこがある」
今すぐ春香を追いかけたい。
追いかけて連れ戻して、他の男と遊びに行くなんてって説教して。
それから、この腕で抱き締めて、もう離さない。
「あ、やべ。俺も今日、彼女と約束してたんだった」
そう言う前に、海生が一瞬、ふっ、と口角を上げたのは気のせいじゃないと思う。
テニスコートの脇に設置されてる時計に態とらしく目をやると、海生は「大ちゃん、ごめん」と手を合わせた。
「お願いしといて悪いけど、俺も予定あったんだ。だから明日見てくれると助かるんだけど」
こいつ……まじ演技下手すぎ。
それに生徒のくせに変な気回してんじゃねぇよ。
でも、ま。今日は有難くそうさせてもらおうかな。
「ああ、明日な」
そう言うと、俺は駆け出した。
「大ちゃん、頑張れ」と海生が言うのを背中で聞きながら、駅までの道を急ぐ。
さっき部活が終わったばっかだし、まだその辺にいるはずだ。