美男子の恋事情!
「それは……」
拓真がマズイと視線を逸らす。
言い淀む拓真に「何だよ」と圧をかけるようにゆっくりと近付くと、拓真は諦めて口を開いた。
「この間、校庭百周させられたから……仕返し……?」
…………はああぁぁっ?
何が「仕返し?」だ⁉︎語尾なんか上げたって全然可愛くも何ともねぇしっ‼︎
つまりあれか。軽い仕返しのつもりで無駄に駅まで走らされたってわけか。
「お前なぁ、あれはお前らが遅刻したのが悪いんだろ?」
「そうだけど!だからって百周は鬼っしょ‼︎」
何情けないことぬかしてんだ、こいつは。
全国区の櫻川高校テニス部のレギュラーのお前が校庭百周ごときで聞いて呆れる。
そのぐらいで文句垂れてるようじゃ、まだまだ気合と自覚が足りねぇようだな。
「……拓真。お前明日覚えとけよ?」
「へ……?」
嫌な予感かするのか、拓真は右眉をピクピクと引きつらせている。
「明日、校庭百五十周」
無情なコーチ命令に、拓真が悲鳴を上げたのは言うまでもない。