美男子の恋事情!
生物の教科準備室の前で一度深呼吸をする。
このドアを開けたら春香がいると思うと、やけに心臓が煩くなる。
今まで毎日のように顔を合わせてきたけど、ここまで緊張したことはなかった。
自分の気持ちを受け入れた途端、こんなにも身体は正直で。
「俺は恋する乙女かっつーの」
俺が好きだと言ったら、春香はどんな反応をするだろうか。
パァッと華が咲いたように笑うか?
いや、嬉しくて嬉しくて鼻水を出して泣くかもしれない。
それで勢いよく抱き付いてきて、俺はそれを笑いながら受け止めるんだ。
数秒後の事を想像して、クックッと肩を揺らした時。
カサカサ、と廊下の掲示板に掲示された剥がれかけた紙が風に靡いた。
俺がいつも外を眺めている窓から風が入ってきたようだ。
「閉め忘れか」
俺は窓サッシに手を掛けて、外の空気を吸い込む。
心地いい爽やかな風が髪を揺らす。
相変わらず、ここから景色を眺めると思い出すのは麻里香のことだ。