美男子の恋事情!
櫻川テニス部の歴代の部長は、代々前年の部長の指名によって決められる。
春山先輩から次期部長の発表があった時、俺は絶対に海生の名前が呼ばれると思ってた。
俺には関係ないと思って、今日の夕飯は何かなってそんな事を考えていたと思う。
そんな中、呼ばれたのは俺の名前で。
何かの間違いだろって耳を疑って、何度も聞き返したぐらいだ。
「春山先輩も俺達も、拓真“でいいや”じゃない。拓真“が良かった”んだ。そのコミュニケーション能力と誰からも好かれる性格、周りを常によく見て気を配れる。拓真はお調子者だけど、ただ笑ってハイハイ合わせてるだけの調子者じゃないだろ?春山部長は拓真に絶対の信頼を置いてたよ」
春山先輩が、俺を?
俺は海生を身軽にするための当て馬じゃなかったのか……?
「ただの当て馬なら誰もついていかない。部員全員が満場一致で拓真を部長にしたんだ。自信持てよ」
ニヤッと口の端を上げる海生。
俺の心の中を覗いてるかのように、俺の疑問にナイスタイミングで答えてくる。
ホント、海生って俺の事を俺以上にわかっててキモいわ。
でも……そういう奴がいるって、幸せなことなのかもしれないな。