美男子の恋事情!

「春香?」と顔を覗くと、春香は何か言いたげに俺のシャツの裾をちょんと掴み目を合わせた。



「昨日……ごめんね?」


「昨日?」



そういえば、昨日こいつに訳も分からず怒鳴られたっけ。



確かあれは昼休み、一年の女生徒が分からない所があると生物室に聞きに来た時だ。


俺は教師だ。分からない所があれば教えるのが仕事。そういう来客なら大歓迎。


机に対面に座って教えていると、春香が突然生物室のドアをノックなしに開けた。


目をまん丸く見開く春香を、『用があんなら待ってろ』と椅子に座らせて待たせること五分。


一年の女生徒はスッキリした面持ちで生物室を出て行った。



『何してたの』と機嫌が悪そうな春香。



『何って見てれば分かるだろ?勉強教えてたんだよ』


『こんな誰も来ない密室で?二人っきりで?』


『悪いか?お前みたいにふらふら遊びに来るよりかは断然マシだけど』



やけに突っかかって来る春香に少しイラっとした俺は面倒臭いと言わんばかりに溜め息を交えた。



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