美男子の恋事情!

『大ちゃんの馬鹿!鈍感!変態!』



そう大声を張ると、春香は生物室を飛び出した。



何なんだ?あいつは。全く意味がわからん。


あいつのことだからヤキモチだろうけど、ヤキモチを妬かれても困る。


ただ教師が生徒に勉強を教えていただけなんだから。


ってか、変態って……酷い言い様だな。


俺は何もしてねぇし、何もするつもりもねぇよ。



『ガキ』と、春香が思いっきり閉めたドアに向かって呟いた。




「ああ、別に。いつものことだろ」



やけにしゅんと落ち込んでる春香の頭をポンポンと軽く叩くと、パァッと花が咲くように笑った。


どうやら元気が戻ったようだ。


単純。ホント、こいつは昔から世話の焼ける奴だ。



「ほら、もうチャイム鳴り終わったぞ」


「うん!」



春香は手を振りながら走って行く。


手を軽く挙げてそれに応えながら思う。


春香も、“今”の時間を充実したものにしてほしいと。


俺なんかで良い時を無駄にすることなんてない。





< 89 / 145 >

この作品をシェア

pagetop