初恋ナミダ。


暗く考えないようにと、私は手を洗いながら今日の夕食のことを考える。

今日は久しぶりに両親が早く帰宅する。

だから、一緒に舞子のお見舞いに行ってから外食しようという予定なのだ。

夕方5時に病院で待ち合わせ。

時間まで何をしようかと、何気なくスマホを鞄から取り出す。

そして、ロックを解除した先に見つけたのは、母からのメール。


『ごめんね。お父さんもお母さんも、会議が入って今日はダメになっちゃった』


またか……と、私は心からうな垂れた。

今日だけはキャンセルにして欲しくなかった。

それこそ勝手かもしれないけど、嫌な気分を消せるような楽しい時間を過ごしたかったのに。

だけど、ここでワガママを言ったら親を困らせるだけだから。


『わかった。頑張ってね』


私は自分の気持ちに蓋をした。


昔はこんなんじゃなかった気がする。

お母さんは、もっと私たち姉妹のことを気にかけてくれてて、お父さんも休日は私たちを色んな所に連れ出してくれてた。


……いつからだろう。

幸せだなって、心から思えなくなったのは。

家にいることを、苦痛に思うようになったのは。


< 104 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop