初恋ナミダ。
やっぱり……あの時のは見間違いじゃなかった。
どうしてそんな顔をするのか。
何か辛いことを抱えているのかと心配になる。
力になれるかはわからないけど、気を紛らわすくらいはしてあげれるかもしれない。
そう思いながら近づいて行けば。
「……ななせ」
私の気配に気付かない先生が、瞳を翳らせながら、誰かの名前を口にした。
そういえば、以前、先生が図書室で驚いた様子で口にしたのもそんな響きじゃなかったか。
あれが今零した“ななせ”だとしたら。
一気に溢れる悲しい気持ち。
そうでなければいいと願いつつ……
「それ、先生の彼女の名前?」
私は、先生に声をかけた。
当然、椎名先生は驚いて私を振り返る。
驚いたのは、声をかけられたから?
それとも、尋ねられた内容に?