初恋ナミダ。
頭上の太陽が、デッキブラシで灰色のプールサイドを磨く私を容赦なく照りつける。
額に滲む汗を腕で拭うと、無意識に「暑……」と、愚痴が溢れた。
水泳部の顧問に言われ着替えた体操着も汗を吸い始めている。
「にしても、何で先生までいなくなるかな」
さっきまで一緒に掃除をしていた立川先生は、夏休みに行われる他校との合同練習の打ち合わせの為、申し訳なさそうにしながら校内へと戻ってしまった。
水泳部員が来て手伝ってくれる奇跡とかおきないかな。
何で今日に限って休みなの水泳部。
うだうだと脳内で愚痴を吐いていたら、何だか暑さが増した気がして私は背筋を正す。
もう、さっさと終わらせちゃおう。
ガッとやってパッと帰る!
ひとり心に決め、デッキブラシをしっかりと持ち直した時──
「……宮原?」
耳に届いたその声に、心臓がとくんとひとつ大きく脈打った。