初恋ナミダ。
淡い緑色のフェンス越し。
白いカットソーに濃紺の五分袖ジャケットを羽織った椎名先生が、不思議そうな顔で私を見ている。
今日は数学の授業がなかったから、話せてラッキーだなぁ……なんて、呑気な事を考えていたら、椎名先生の眉間にシワが寄って。
「悪さしたのか」
「してません!」
全力で否定すると、先生は他の人を目で探す。
「ひとりか」
「さっきまで立川先生が一緒だったけど、打ち合わせに行っちゃいました」
私の説明に椎名先生は「そうなんだな」と告げると、何故か扉を開けてプールサイドに現れた。
「何か用ですか?」
「ひとりじゃ何かあったら大変だろ。立川先生が戻るまで俺も手伝うよ」
そう言うと、椎名先生は掃除用具入れからデッキブラシを持ってきた。
そして、シャカシャカとコンクリートを擦り始める。