初恋ナミダ。
*8年前
水を吸った紺色のジャージは重く。
けれど、私の前に力なく座り込む先生の表情と言葉は、その何倍も重さを持っていた。
私は、眉をハの字にしながら口を開く。
「海で……そうなんだ……」
ななせさんは、海で亡くなった。
聞かされて納得する。
だから、私がプールに落ちた時にあんな風に取り乱したように見えたんだと。
……あ、もしかして。
「先生が海が嫌いなのって……」
「……ああ……そうだよ」
私の曖昧な問いに、椎名先生は頷きもせず、ただ小さく唇を動かして。
「……8年前のあの日、七瀬が死んでからだ」
告げると、先生は視線を風で緩く波立つ水面に落とし、ポツリポツリと語り始めた。