初恋ナミダ。


やがて、終業時間がやってきて、先生は教卓の上にあった教材を纏める。


「今日はここまで。気をつけて帰るように」


椎名先生はそう言うと、教材を手にして教室を出て行った。

それを見て、私は急いで勉強道具を鞄にしまうと席を立ち後を追う。

別に、数学についての質問があるわけではなかった。

ただ、動いてしまったんだ。

体が勝手に。

頭からはなれなかっんだ。

この学校に残ってるはずの、椎名先生と七瀬さんの思い出が。

でも、これ以上、私が立ち入るのもおかしいから。

だから……


「宮原? どうした?」

「えっと……」


振り返った先生に、私は全てを笑みで誤魔化して。


「元気ですか?」


それだけ、口にした。


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