初恋ナミダ。
*強がり上手
週1の数学特別講義を受けるようになって早4週目。
8月も半ばになり、暑さも絶好調になった頃。
「あんたさ、椎名のこと好きなの?」
ついに、その時が来た。
数学の講義が終わって帰り支度をしていたところに、あの3人組から声を掛けられたのだ。
ちょっと話があるんだけど、と。
今日は舞子のお見舞いに行く予定はない。
でも、それを理由に断わろかとも一瞬考えたけど、舞子を口実にするのはやっぱり嫌で。
私は仕方なく頷いて、彼女たちの後ろを歩き、現在、人気のない閑散としたゴミ置場の前に立たされている。
以前はここに焼却炉があったらしいけど、燃やすと有毒ガスか出て生徒の健康に被害が出るとかで、全国的に廃止になり、撤去したんだとか。
「毎回毎回、椎名のこと見つめてさー。言っとくけど、あんたなんて相手にされないからね?」
勘違い女。
いつか陰口で言っていたあだ名を口にして、3人は私をせせら笑う。
知ってるよ。
先生は私なんか相手にしないって。
勘違いなんかしないよ。
先生の心には今もまだ、七瀬さんがいるんだから。
だから──
「言われなくてもわかってる」
わかってるから、見つめちゃうことくらい……許してよ。