初恋ナミダ。


一歩、また一歩と進む度に痛みが増していくような気がする中、あと少しで保健室という所で、通り過ぎようしていた職員室のドアがガラガラと開いた。

驚いてそちらに視線をやると、そこには私と同じように少し目を丸くした椎名先生が立っていて。


「……どうした?」


訝しげな視線を向けられた。


「え? や、えっと?」


何て言えばいいのかわからず、私が答えあぐねていると、先生の目が私の頬を見た。


「……叩かれたのか」

「ええ!? エスパー!?」


ズバリ当てられて思わず口にしてしまった私に、先生はため息を吐く。


「そんなくっきりとした手形つけてればな」


わ……手形、付くほど強くやられたんだ。

それは血も出るはずだ。


何があったのかと聞かれたけど、まさか先生のことで呼び出されましたとは言えるわけもなく。


「たいしたことじゃないので」


あははと笑って誤魔化し、さよならーと挨拶をした私は、なるべく普通にと痛みを堪えて歩き出す。


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