初恋ナミダ。
下駄箱から上履きを取り出し、学校指定の黒いローファーから履き替える。
挨拶を交わす生徒たちの声を聞きながら、私は真っ直ぐに延びる廊下を歩いた。
右側に並ぶ窓からは朝の光が差し込み、廊下を明るく照らしている。
ふと、カラカラと扉が動く音がして。
見ると、数学準備室から椎名先生が出てきた。
授業で使うのか、分厚く重ねられたプリントを両手に持っている。
……ちょっと重そうかも。
昨日、助けてもらったし、お手伝いしようかな。
「おはようございまーす」
私の挨拶に、椎名先生は視線をこちらへと向ける。
「宮原か。おはよう」
笑みはないけれど、声はどことなく柔らかい。
私は椎名先生に歩み寄り、少し持ちましょうかと手伝いを願い出てみた。
けれど、先生は首を横に振る。