初恋ナミダ。
ズキン、ズキン。
さっきよりも強く感じる痛みに唇を噛み締めた時、背後からまたしても椎名先生のため息が聞こえたかと思えば。
「本当に強がりだな」
そんな風に言われた直後、私の足がなぜか。
「ひゃ!?」
磨かれた床から離れ、背中と膝の裏に強い力がかかった。
そして、気がつけばすぐそばに端正な椎名先生の顔があって。
「えっ? ええっ!?」
「動くと落ちるぞ」
そう言われ、ようやく自分が俗に言うお姫様抱っこをされているのだと認識した。
途端、顔がボッと火を噴いたように熱くなる。
「お、下ろしてください!」
「痛いなら無理して歩くな。悪化する」
どうやら隠し切れなかったらしい。
先生は有無を言わせない様子で私を冷房のきいた保健室まで運んだ。
幸い、保健室に到着するまでの間には誰にも会う事はなかった。
また、保健室にいるはずの宝生先生も不在のようで、椎名先生は白いベッドの上に私を降ろすと、少し待つように言ってから壁際に設置されている棚から湿布と包帯を取り出す。
それから、小さな冷蔵庫から保冷剤をひとつ手にすると、頬を冷やすようにと私に手渡した。