初恋ナミダ。


言われるがまま、私は頬にひんやりとした保冷剤を当てる。

椎名先生は丸椅子をベッドサイドまで引いて移動させ、そこに座ると私に靴と靴下を脱ぐように指示した。


「い、いいです。自分でできます」


先生にやってもらう……というか、足に触れられるなんて、さっきのお姫様抱っこに続き恥ずかしいから断ったんだけど、いいから早くしろと軽く睨まれてしまい、私は仕方なく言われた通りにする。

先生の手が足首を確かめるように触って。


「腫れてるな。寝る時は足を少し高くして寝ると腫れがひきやすくなるから、クッションか何かで高さを調整して寝るといいぞ」


アドバイスしながら、患部に湿布を貼ってくれた。

そして、包帯を手にすると、湿布の上から丁寧に巻いていく。

その優しい手つきに、気にかけてくれた心に、胸がキュッと押し潰されるような感覚。

好き。

先生への想いが溢れて止まらない。

風もあまりない夏の正午前。

2人だけの保健室。

胸を高鳴らせる私の耳には、外から聞こえる蝉の合唱。

やがて、先生は包帯止めで固定し私の足から手を離すと、涼しげなその瞳で私を真っ直ぐに見つめた。

何があったのか聞かれるのかと思い、私はその視線から逃れるように笑みを作る。


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