初恋ナミダ。


「手当て、ありがとうございます。先生、包帯巻くの上手」

「……昔は、よく怪我したからな」

「そうなんだ。先生、やんちゃだったの?」

「バスケだよ。中学から6年間、バスケ部だった」

「じゃあ、この──」


高校でもバスケ部だったんだ。

そう言おうとして、私は口をつぐむ。

高校の時の話しをしたら、七瀬さんの事を思い出させてしまう気がしたからだ。

話題を変えようかと悩んでいると、先生は立ち上がり、小さく笑う。


「ここでもバスケ部だよ。3年間な。七瀬の事は気にしなくていいって言っただろ」


そう話すと、先生は残った包帯を手に立ち上がった。

棚に包帯を戻す椎名先生の背中。

きっと、先生も私と同じだ。

大丈夫な振りをして、自分は大丈夫だと言い聞かせて。

そのくせ、誰かに触れられそうになると隠そうとする。


「先生」


いまだベッドに腰掛けながら声をかけると、先生はデスクに置かれた保健室利用カードを手にしながら私を見た。


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