初恋ナミダ。


渡り廊下の先にある自販機でジュースを買い、それを片手に生徒玄関の隣にある職員用玄関に向かう。

この玄関には4名程が腰掛けられるベンチがあり、私たちはそこに座った。

くるみはレモン味の炭酸水のプルタブを開けると、思いついたように私を見る。


「そうだ。この前泊まりに来た時、ヘアクリップ忘れていってない?」

「あ、そう! 失くしたと思ってたけど、くるみんちだったんだ」


それは、べっ甲のヘアクリップ。

他にも似たようなのを持っていて、困る事もなかったからそんなに気に留めてなかったんだけど、どうやらくるみの家に忘れていたようだ。


「脱衣所に落ちてたのをお兄ちゃんが見つけたんだって。自分の彼女のかと思って聞いたら喧嘩になったってさ」

「わ、それは申し訳ない……」


自分の忘れ物がまさか迷惑をかけてしまったとは。

謝る私にくるみはいいのいいのと笑う。

そして、ヘアクリップを近々渡してくれると告げた後。


「しっかし、あのゲーマー兄貴に彼女かー」


感慨深げに声にした。


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