初恋ナミダ。


「大丈夫だ。職員室に運ぶだけだしな」

「でも、重そうですよ」

「たいしたことない。気にしなくていいから、教室に向かいなさい」


先生らしい言葉に、私は仕方なく頷いて。

と、その時、プリントを抱える先生の右手人差し指が、何故か不自然にピンと伸ばされていることに気付いた。

良く見ると血が出ている。


「先生、怪我してる」


私の視線の先に気付いた椎名先生は「ああ」と声にすると、さっきプリントの端で切ってしまったんだと教えてくれた。

以前、私も切ったことあるけど、これ地味に痛いんだよね。

しかも、先生の場合結構血が出てるし、がっつりいったのかも。


「絆創膏は?」

「あいにく準備室にはないから、とりあえずこうして汚れないように気をつけてるんだ」


もういいか?

先生はそう言うと、私に背を向けて歩き出そうとする。


「あ、待って椎名先生」


私は先生を呼び止めると、鞄のポケットから小さな絆創膏を出した。


< 15 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop