初恋ナミダ。


前の私なら、こんな時間も椎名先生に話しかけてた。

先生の声を聞きたくて、他愛もない話題を振ってみたりして。

だけど、宝生先生の言った「互いに痛い目を見る前に」という言葉に、私は考えてしまったのだ。

私の想いが、先生を困らせることになるかもしれないんだと。

もしも変な噂がたてば、迷惑をかけてしまうかも、と。

私が困るのは構わないけど、先生に嫌な思いをさせたくない。

それなら、宝生先生の言う通り……この想いは胸の奥深くにしまった方がいいのかも……

そう、考えては見ても。


「……きっと、無理」


無理にしまいこめばきっと、先生を好きな気持ちは溢れてくるだろう。

それは、忘れられない事を無理に忘れようとするのと同じ。

忘れようとする事は、その事を強く想う事。

だから、しまい込もうとすれば、私の気持ちは強く椎名先生を想ってしまう。

何より、私はいつの間にかこんなにも先生を好きになってしまった。

もう、この気持ちを今更なかったことにはできない。



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