初恋ナミダ。
私は口元に笑みを作り、先生に笑顔を向ける。
「明日の予定の事でちょっと。なので、大丈夫です」
大したことじゃないと告げ、私はプリントの枚数を数える。
先生は少しだけ何か言いたそうに私を見ていたけど、わざと枚数を声にして数えていたら、諦めたように私から視線を外した。
これでいい。
これで、いいんだ。
いい……はずなのに。
椎名先生との距離感を意識してから2週間。
自然な生徒と教師の姿を求めれば求める程、私の先生に対する態度はぎこちなくなるばかりで。
月曜日、珍しくバスで登校してきた悠馬と一緒に校門をくぐった時だった。
「なあ、遥。お前、今日ヒマ?」
「放課後? 今日は舞子のとこに──」
「せんせー、おはようございまーす」
背後から、あの3人組のつり目の子の甘えたような声が聞こえて振り向くと。
「おはよう」
意外にもすぐ近くに挨拶し返す椎名先生がいて、向き直る間も無く目が合ってしまった。
「え、ええっと!? なんだっけ?」
思わず目を逸らし、焦りながら悠馬に向き直ると会話に戻る。