初恋ナミダ。


「これ、良かったら使ってください」


伝えつつ、絆創膏を重なるプリントの一番上に乗せる。

すると、絆創膏を見た先生の瞳が一瞬だけ僅かに見開かれた。

そして、少しの困惑を見せるも。


「昨日、助けてもらったお礼です」


私の言葉に椎名先生は「ありがとう」と、やっぱり少し戸惑いを乗せた声で言って、今度こそ職員室へと向かったのだった。


……ありがとう、なんて言ってたけど、使わないかもしれないなぁ。

だって、私のあげた絆創膏を使うようなイメージが先生にない。

ないんだけど……

昨日助けてもらった時のことを思い出して、ちょっと期待しちゃったり。


だから、その日の椎名先生の授業は待ち遠しかった。

嫌いな数学の授業を楽しみにするなんて、理由が勉強じゃないといえど初めてで。

今年はクラスメイトになった悠馬の訝しげな視線を時々受けながら、ようやく訪れた数学の時間。

教室の扉を開けて、黒板の前に立つ先生の右手の人差し指には……


「あ……」


私のあげた可愛い猫のキャラクターと、ポップな色合いの絆創膏が巻きつけられていた。



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