初恋ナミダ。


「そっか、聞いたのか」

「……はい」


今度はちゃんと声を出して応える。

赤信号で車が停止して。

チラリと葛城さんの様子を伺うと、私の視線に気づいた葛城さんが私を見て、寂しそうに微笑んだ。


「あいつのせいじゃない。誰だって助けられなかった。……1番近くにいたはずの、オレだってね」


……え?

近くにって……


「七瀬さんの?」

「そうだよ。要に相手にされなかった七瀬をからかってたんだ」


葛城さんの話しによると、一緒に泳ごうと椎名先生を誘った七瀬さんが断られたのを見ていた葛城さんは、男友達と泳ぎに行く椎名先生を見送ったあと、パラソルの下で残念そうにしている七瀬さんを振られただのなんだのとからかってたらしい。

で、むくれた七瀬さんは1人で泳ぎに出たらしく、少ししてから謝ろうと探しに向かった。

そして、見つけた時はもう……溺れていたんだと、葛城さんは話してくれた。


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