初恋ナミダ。
「オレを責めればいいのに、あいつは1度だってオレを批難したことはないんだ。優しいを通り越して、ひどい奴だろ?」
信号が青に変わって、葛城さんはまたアクセルを踏んだ。
その横顔は痛みを隠して微笑んでいるように見えて。
「葛城さん、言ったじゃないですか。誰だって助けられなかったって。椎名先生も、そう思ってるんですよ」
そう、声をかけると、葛城さんは「キミも優しいね」と笑った。
違うよ、優しいわけじゃない。
だって実際そうだから。
椎名先生はわかってる。
仲間の誰もが助けられなかったことを。
けれど、自分がきっかけだと思ってる。
だから、葛城さんを責めたりしないんだ。
「まあでも、最近は君のおかげか雰囲気がマシになったかな」
葛城さんの声が少し明るくなったかと思えば、何故か私のことに触れられて首を傾げる。
「私ですか?」
「ちょっと手がかかるけど頑張り屋さんだって、楽しそうにそう言ってたなぁ」
「た、楽しそう?」
楽しそうな椎名先生なんて想像できなくて目を丸くすると、葛城さんはハハハと笑って「要なりにね」と言った。