初恋ナミダ。
*甘えさせて
濃紺の空には煌々と輝く三日月が浮かんでいる。
さっき、車を降りる前に見た車内の時計の時刻から予想すると、そろそろ8時半になる頃だ。
家にいたなら、お風呂に入るくらいの時間だけど今日は別。
今、この時──
「匿うってなんだ」
私がいるのは、椎名先生の住むマンション前で。
「えと……家に帰れないというか、帰りたくないというか」
私の隣には。
「……まさか、家出してきたのか?」
難しい表情を浮かべた椎名先生。
「まあ……そんな感じです」
苦笑いを浮かべると、先生は眉を寄せため息を深く吐き出した。
いけない。
先生を困らせている。
私は隠すつもりだったし、こうなったのは葛城さんのせいなんだけど、その葛城さんはさっさと逃げてしまったので文句も言えない。
いつかまた会えた時にはガッツリ言わせてもらおうと心に決めつつ、私はこの場をどうにかすることにした。