初恋ナミダ。


「そんなの聞いてみなくちゃわからないよ。じゃあまずはー」

「俺に拒否権はないのか」

「ありませーん」


そうして、私は半ば無理矢理先生のことを尋ねていく。

そんな私に、先生は渋々といった様子で答えてくれた。


お気に入りのアーティスト。

子供の頃の好きだった遊び。

最近見た映画。

思いつく限り、色々。

そのうち、先生はパソコンを閉じて私の向かいに座った。

いくつ目の質問だっただろう。

コーヒーを片手に足を組む先生に、10年後の自分に一言、なんて、どっかのテレビ番組でしてそうな質問をしてみた時……


「……謝れたのか……許して、もらえたのか」


椎名先生は、瞳を翳らせ、今にも消え入りそうな声で言った。

何を、なんて聞かなくても想像はつく。

七瀬さんのことなんだろう、と。

けれど、どう反応していいのかわからず、私はただ曖昧に微笑んだ。

七瀬さんはもう死んでしまっている。

だから、本人に謝ることも、許してもらえたかを確認することも不可能だ。

どうしたら、先生は過去じゃなく未来を見れるんだろう。

私に何かできることってないのかな……


< 203 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop