初恋ナミダ。
「宮原」
「あ、はい?」
無意識のうちに考えふけってしまっていた私は、先生に呼ばれて我にかえる。
「もう遅い時間だ。泊まるなら俺ので良ければベッドを使ってかまわないから」
「えっ? でも、先生はどこで寝るの?」
「俺は適当に外で時間を潰す」
そう言いながら、椎名先生はキッチンに移動するとコーヒーカップをシンクに置いた。
「ええっ!? それなら私が出て行くよ!」
私が泊まることで出掛けさせるなんて、とんでもない!
急いで立ち上がった私だったけど、先生は「ダメだ」と言葉で制した。
「いやいや、私のせいで先生が出てくとかそっちの方がダメ」
こればかりは私も譲れないと、リビングの端に置いたトートバッグを手にすれば、先生は慌てたようにキッチンから出てきて私の腕を掴んだ。
「わ、わかった。ここにいるから宮原もいろ」
何かあったら困るんだよ。
そう続けた先生。
「……ごめんなさい。迷惑ばかりかけて」
「迷惑だとは思ってない。俺が勝手に心配してるだけだ」
余計なことは考えないでいいんだと、先生は私の頭をポンポンと優しく叩いた。
ああ、また。
その優しさに、好きが増えていく。