初恋ナミダ。
*海へ
──私が全ての支度を終えた頃、椎名先生はバスタオルで髪の毛を拭きながらリビングに現れた。
それだけでもレアなのに、先生の格好がいつもよりラフで、激レア感が半端ない。
白い無地のカットソーに、細身のデニム。
学校にはデニムなんて履いてこないし、これがまた新しい魅力というか、とにかく初めて見る休日スタイルの椎名先生にドキドキしていた。
そんなときめきいっぱいの朝の食事は、トーストとサラダ、それとコーンスープだ。
どうやら先生は朝はパン派らしく、大抵がこのメニューなのだそう。
サラダは私が担当し、出来上がったものを正方形のダイニングテーブルに並べて。
何だか同棲してるみたいだな、なんて図々しいことを密かに考えながらトーストをかじった。
「ごちそうさまでした!」
お世話になってるので片付けはやらせてくださいと頼み、私はシンクの前に立って食器を洗う。
ふと、リビングのソファーに座る先生に視線を向ければ。
「……薬?」
手のひらに乗せた錠剤を口に含み、水で流し込む姿があった。
クッキーを渡しに行った時、机の上に薬袋があったけど……それと同じ薬、なんだろうか?
この間はひどく咳き込んでたし、もしかして……何か、持病がある、とか。
よく見ると少し痩せた気もするし……
「先生、大丈夫?」
心配になってカウンター越しに声をかけると、先生は「大丈夫だよ」と素っ気なく答えてグラスをコーヒーテーブルに置いた。