初恋ナミダ。
「七瀬、は……」
呟き、視線を足元に落とした椎名先生。
雰囲気が暗くなってしまってはいけないと思い、私は努めて明るい声で「万が一そんな人なら、私がぶっとばしてあげるね」と冗談めかして伝えれば。
「……乱暴だな」
先生は、小さく笑って顔を上げた。
そして……リビングの窓の向こうに見える青空を眺めて。
「行ってみるか、海」
大きな一歩を踏み出してくれた。
「うん!」
大きく頷いて、私は笑みを浮かべる。
どうか、どうか、先生が少しでも前に進めるように。
そう願いながら、私は出掛ける支度をする先生を見つめていた。