初恋ナミダ。
*約束
爽快な青空の下で椎名先生は、揺らぐ水面を優しい眼差して見つめながら……
「押し付けて、ごめんな」
七瀬さんに向けて謝った。
答えは返ってこない。
ただ、押し寄せる波音が耳に届くだけ。
だけど、先生の言葉はきっと七瀬さんに聞こえてるだろう。
この青く輝く海を渡り、澄み渡る空を泳ぎ、天国の彼女の元へと。
先生は深く息を吸い込んで吐き出すと「行こうか」と、私に手を差し出した。
立ち上がるようサポートの為に伸ばされたその手は、昨晩私がこっそりと重ねた温かい手。
また触れられるなんて思ってなくて、少しドキドキしながら先生の手を握った。
力強く引かれ、立ち上がる瞬間──
先生の力と私のバランスの取り方がうまく合わなかったのか、グラリと体が前につんのめってしまい転びそうになる。
だけど、先生が反対の手で私の体を支えてくれて。
「び、びっくりした……」
砂まみれにならずに済んだ。
……のだけど。
自分の体勢に気づいて目を剥く。
だって私ってば、せ、せ、先生の腕の中に飛び込んだみたいになってる!