初恋ナミダ。


実際、教師の中には生徒を名前で呼ぶ人もいる。

中学の時の担任もそうだった。

気さくでお父さんみたいな人で、生徒からも人気があった。

だから、人によってはありなご褒美。

でも、真面目でクールな椎名先生には難しいお願いごと。

案の定、私の提案したご褒美に先生は「それは困るな」と眉を寄せた。


「俺は、むやみに生徒を名前で呼んだりしない主義なんだ」

「えー? それじゃ、先生の中で私が生徒以上の存在になれたら呼んでくれる?」


半分冗談、半分願望。

それをふざけた雰囲気で伝えたのだけど。


「……生徒以上、か」


なんだか真面目な顔で悩み始めてしまった。

あまり困らせてもと思い、私が眉間にシワを作っている先生に声をかけよううとしたら。


「いつか克服できたら、考えさせてくれ」


よく、わからない事を言われた。


「克服って、七瀬さんのこと?」


尋ねたけど、先生は緩く頭を振るだけ。


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