初恋ナミダ。


「じゃあ何を?」

「なんだろうな?」


答えたくないのか困ったように微笑んではぐらかす椎名先生。

気になるけど、あまりしつこくするのも良くないと考えつつも頬を膨らませると。


「じゃあ、これだけ」


そう言って先生は、私にしっかりと向き合って。


「俺は宮原のおかげで七瀬のことだけじゃなく、今抱えてる大きなものとも向き合おうと思えた。それは、もしかしたら手遅れかもしれないけど、やるだけやろうと思うんだ」


誓うように声にした。


私のおかげ、だなんて。

大したことはしてないけれど、そう言ってもらえるのはとても嬉しい。

好きな人がくれる言葉は、すごく力があるんだね。

だけど、先生が抱えているものがよかわからないままなのでもどかしい気持ちにもなった。


「よく、わかんないけど、じゃあそれを克服できたら名前のこと、考えるって約束ね」


お願いし、小指を立ててみせる。

そうすれば、先生はフ、と微笑んで。


「ああ。約束するよ」


私の小指に、先生の小指を絡めてくれた。


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