初恋ナミダ。
最終章
*信じたい
昼休みの校内は、いつも賑やかな生徒の声が行き交っている。
けれど、今日は少し違っていて。
「ほら、あの子だよ」
「あの子が何?」
廊下を歩く私の耳には、生徒たちのひそひそと話す声。
「椎名とデートしてたとかいう相手!」
その原因は、私だ。
どうやら椎名先生と海に出掛けたあの日、うちの生徒に見られていたらしい。
妙な視線を感じるようになったのは、先生が休むようになって2日目。
同日の2時限目前に、深刻そうに眉根を寄せたくるみから噂を聞かされた。
私服姿の私と椎名先生が、仲よさげに並んで歩いていたのを見た子がいるらしい、と。
そして、先生が休んで3日目の今日。
噂は更に広まり、今やどこにいても突き刺さる視線とあざけりを含む声を向けられるようになっていた。
「あー、憧れてたのにショック〜」
「ほんとほんと。椎名先生も生徒に手を出すとか最低だよね」
移動教室の途中、先生のことを悪く言う女生徒の声に、私はギュッと拳を握る。
確かに私は椎名先生と一緒にいた。
でも、先生は私を助けてくれただけなのに。