初恋ナミダ。


「椎名が休みなのって、あの子のせいじゃない?」

「だね。絶対そうだよ」


……こんな風に言われるのも、もう何度目だろう。

椎名先生が休んでいる理由を生徒は誰も知らない。

くるみが見たという話では、女生徒が宝生先生に理由を尋ねていて、宝生先生は笑顔で「椎名先生も色々あるのよ、きっと」とかわしていたらしい。

その宝生先生の答え方のせいかはわからないけど、私とのことが学校にバレたから謹慎中なんじゃないかという憶測が飛び交っているようだった。

だけど、本当にそうだとしたら、私も停学になっておかしくない。

なのに私は呼び出しもなく現在に至っている。

これはどういうことなのか。

椎名先生本人に聞けばすぐにわかるのかもしれないけど、私は先生の連絡先を知らない。

幸い家ならわかるけど、噂がある今、押しかけるのは得策じゃないだろう。

どうするのが一番いいのか。

八方塞がりの中、どうにか大きなトラブルもなく放課後を迎えた私は、舞子のお見舞いに向かうべく生徒玄関に立つと溜め息を吐き出した。

昨日の帰りはここであの3人組に待ち伏せされ、非常階段の前に連れて行かれたかと思えば散々文句を言われた。

そして今日は人ではなく、地面を叩きつける雨が私の行く手を阻んでいた。


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