初恋ナミダ。


特別じゃなくていい。

放課後の準備室で勉強して、時々くだらない会話を交わすの。

先生の一言で私が笑顔になったり、私の一言で先生が呆れた顔したり。

そんな当たり前の毎日を。


「早く、学校に来ないかな」


焦がれ、零した声に、くるみが「そろそろいい加減戻ってくるよ」と明るく返してくれた。


けれど──

紅葉した葉が散り、代わりに雪がその枝を飾るようになっても。

粉雪が止み、薄紅の桜が咲き誇っても。

椎名先生は、学校に戻ってくることはなく。


「はーるか! 送ってやろうか?」

「いいの? ありがと悠馬」


3年に進級した私は、今もまだ心の中で先生を想いながら、毎日を過ごしていた。



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