初恋ナミダ。
──先生が息を引き取ってからの記憶はひどく曖昧だ。
病室にお医者さんや看護師さんがバタバタと入ってきて、椎名先生を囲んで。
かけつけた葛城さんが泣きじゃくる私の背中をさすりながら、静かに涙を流してたのは覚えている。
だけど、どんな会話をして病院を出たのか。
葛城さんに家まで送ってもらってから今まで、何をして過ごしていたのか。
思い出そうとする気力さえなく、私は自室のベッドに倒れこんでいた。
握っていた手から力が抜けたあの瞬間と感覚が、何度も脳内で再生される。
その度に、心がナイフでズタズタに引き裂かれたように痛み、涙腺が決壊する。
泣いて、泣いて。
いつしか泣き疲れ、ようやく眠れたのは明け方、空が白み始めてからだった。