初恋ナミダ。
お線香に火をつけ、葛城さんと2人で手を合わせる。
「……先生、七瀬さんに会えたのかな」
ポツリ、声を零すと。
「会えたんじゃないかな」
葛城さんが答えてくれた。
私は手を下ろし、お墓を見つめる。
「天国で、ラブラブしてるんですかね」
「……してないよ」
「どうしてですか? 椎名先生と七瀬さんは──」
「元、恋人。今は違う。要は……」
そこまで言うと、葛城さんは迷うように視線を落とし……
「ごめん、要。やっぱり遥ちゃんに届けるよ」
お墓に向かって謝った。
そして、葛城さんは持ってきていた鞄から一台のハンディカメラを取り出して手早く操作をすると私に渡す。
「何ですか?」
「うん。見せるべきか迷ったんだけどね。届けてやりたい気持ちが消えなくてさ。もしかしたら、あいつは余計なことするなって怒るかもしれないけど」
苦笑いした葛城さんは、水桶を手にすると片付けてくると言い残し、お寺の方へと消えて行った。
私は葛城さんの姿が見えなくなると、ハンディカメラの画面に視線を落とす。
そこには──
「……先生?」
病院のベッドに座る、パジャマ姿の椎名先生が写っていた。
焦がれていた人の姿に、私は急いで再生ボタンを押す。