初恋ナミダ。
ゴトリとハンディカメラがベッドサイドテーブルの上に置かれ、少し傾いたまま、椎名先生の姿を正面から写していた。
『要、真面目な話さ、このまま会わないでいいの? あの子の気持ち、気づいてないわけじゃないだろ?』
カメラが回っていることに気付かず、葛城さんはとんでもない質問を先生にする。
先生は、僅かに瞳を揺らしてから。
『治ったらと決めてる』
質問に対して否定せず、ページを捲る。
『……治らなかったら? 彼女がいつか知ったら要みたいに後悔するかもよ』
先生の後悔。
それは、七瀬さんのことだろう。
先生は答えない。
静かに、本を見つめているだけ。
『ごめん、嫌な言い方した。コーヒー買ってくるよ。体調良さげだし、お前もなんかいる?』
『いい』
素っ気なく遠慮した先生に、葛城さんが『そう?』と返すと、ドアを開けて出て行った音がした。