初恋ナミダ。


再び1人になった私は、さっきまで彼女が座っていた席に腰を下ろす。


かつて私もここに座り、先生から勉強を教えてもらっていた。


『宮原、お疲れ。頑張ったな』


椎名先生と過ごした時間は、私の宝物。

先生と同じ数学教師になったのは、先生から教えてもらったものを無駄にしたくなかったから。

先生と同じく、母校で働くことになったのは驚いたけど……

同じ道を歩めているのは嬉しかった。


──ふわり、と。

換気の為に開けていた窓から風が入り込む。

僅かに鼻をくすぐる新緑の香りは、もうすぐ椎名先生の命日が来るのを知らせてるようで、私は少しの寂しさを乗せて微笑んだ。


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