初恋ナミダ。
「あたた……」
勢い良く顔面もぶつけ、打った鼻を押さえながら目の前を確認した。
そこには、物ではなく人。
20代半ばくらいだろうか。
そこはかとなく色気の漂う男の人が、私を見下ろしていた。
その表情に怒気はなく、それどころか。
「大丈夫? 痛くなかった?」
首を傾げ、気遣ってくれて。
「だ。大丈夫です。ぶつかってごめんなさい」
謝ると、お兄さんは「いいよいいよー」とニコニコしながら言った。
そして。
「ところで、その制服って御崎(みさき)高校のだよね?」
「え? あ、はい……」
「だよね。ちょっとデザイン変わったんだっけ」
今のデザインの方がが可愛いねとか続け話すお兄さんに、私は曖昧に頷いた。
確かに、うちの高校のデザインは私が入学する2年くらい前に変わった。
変わったけど、何故この人は詳しいのか。
不思議に思ってると、私の疑問が顔に出ていたのか、お兄さんは「ああ、別に気持ち悪い趣味とかじゃないから安心して」と笑う。
それから、彼が何かを話そうと、再び唇を開きかけた時……