初恋ナミダ。


私が苦笑いしながら「すみません」と謝ると、アキと呼ばれたお兄さんが椎名先生に「教え子?」と尋ねた。

先生が頷くと、私はペコリとお辞儀する。


「2年の宮原遥です」

「あ、どうもご丁寧に。オレは要の友人、葛城 彰人(かつらぎ あきひと)」


よろしくねと柔らかく人懐こい笑みを浮かべた葛城さん。

その横で、無表情のまま私たちの挨拶を見守る椎名先生。

なんていうか……正反対の性格っぽい2人だなぁ。


……あ、そうか。

葛城さんが制服に詳しかったのって、椎名先生の友人だからだ。

1人納得していた私に、葛城さんがにっこりしながら私を見て。


「にしても、いいね。高校生」


そんな風に口にする。

すると、椎名先生が呆れたように小さく溜め息を吐いた。


「まさか宮原に手を出す気か?」

「どうかなー。でも、好みに育てるのもありだよね。育てていい?」

「…………」


葛城さんが許可を取るように椎名先生に話しかけるも、先生は無言のまま軽く目の前の友人を睨むのみ。

その様子に葛城さんは肩をすくめて。


「はいはーい。やめますよー。君は要のお気に入りだからダメだってさ」


変な事を口にした。


< 30 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop