初恋ナミダ。


「ね、悠馬。海が嫌いな理由ってなんだと思う?」


私の質問に悠馬は「いきなりなんだよ」と一瞬だけ私を振り返る。

けれど、いいから答えてと言えば、悠馬は少し考える素振りを見せてから。


「潮風がベトベトするから、とか?」


女子っぽい理由を口にした。


「潮風……」


椎名先生は潮風が苦手。

んー…真面目な人だし、神経質かもって考えたらなくもない気がするけど。


「あとは、トラウマ的なやつじゃねー? 溺れたことがある、みたいにさ」

「やっぱそれかなぁ」


悠馬もそう思うんなら、溺れたことがあるのが一番濃い線なのかもしれない。

あれかな。

私の考えすぎなのかな。

寂しそうに見えたのも私のただの気のせいで、別に海嫌いとは何のつながりもないのかも。


「つーか、誰かの話?」

「うん、ちょっとね」


根拠なんてないんだ。

あまり深く考えるのはよそう。

そう思った私は、悠馬に別の話題を振って気持ちを切り替えたのだった。



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