初恋ナミダ。


1年の時、親友に『そんなに図書室が気に入ったなら、図書委員にでもなればどう?』なんて言われたけど、それは即却下した。

だって、図書委員なんかになったら、あのぬくぬくホジションで幸せな時間を過ごせなくなる。

私が気に入ってるのは図書室という本に囲まれた環境ではない。

図書室にある、あの一角なのだ。

なので、今日のホームルームで行われた委員決めでは、保健委員に立候補した私。

本当は何もやりたくないのが本音だったけど、2年にもなると進学のこととか就職のこととか考えないといけないし、何かやっておいた方がいいだろうと思って、なんとなく保健委員に。


「ふあ……眠い」


欠伸をひとつし、放課後の人気のない廊下を歩く。

まだ脳が覚醒しきってないようだ。

そんな感覚を持ちながら、私はゆっくりと3階から2階へと階段を下っていく。

その途中、私はふと視線を階段の踊り場の窓へと向けた。

実は、ここからは、つい先週まで満開の桜が見えていたのだ。

けれど今はもう葉桜となってしまっていて、薄紅色の花びらはよく目を凝らさないと見えない程になっている。


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