初恋ナミダ。


芽吹き、花を咲かせて満開となり散っていく。

桜の見頃はあっという間すぎて、少し寂しい。

始業式に見た桜吹雪はとても綺麗だったけど、儚くて、切なくて。

ぼんやりと、その光景を思い返しながら階段を下っていたのがいけなかった。


階段に着地した右足が不安定さを覚えて。


危ない。


そう思った刹那。


──ガクン。


身体のコントロールがとれなくなり、手すりに手を伸ばそうとした努力もむなしく、私は階段から転がり落ち……


て、ない?


身体は前に傾いて右足も踏み外したままだけど、私は落ちていなかった。

手は手すりに届いてはいない。

なのに、落ちていないのはどういうことなのか。

一瞬、わけがわからずに、ただただ心臓をバクバクさせていたら。


「怪我はないか?」


耳元で、程よく低く、かつ甘さを持った声が聞こえて。

そちらへと顔を向けると、思ったよりも至近距離にあったのは……



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