初恋ナミダ。


──翌日。

放課後の廊下を帰宅しようと歩いていたら。


「椎名せんせー、さよならー」


反対方向から女生徒数名にキャッキャと挨拶されている椎名先生を発見。


「ああ、さよなら」


クールに挨拶を返す先生。

あれから、宝生先生お手製のケーキを食べたのかな。

きっと凄ーく美味しかったんだろうなぁ。

……私のクッキーはどうなったんだろう。

やっぱり怪しいからって処分した?

それとも、食べないにしてもとりあえずは受け取ってくれたのかな?

聞きたいけど聞けない。

そんなジレンマにいつの間にか足を止めていたら、椎名先生は立ち尽くす私に気付いたようで目が合った。

避けるつもりはないけれど、何も言わずにクッキーを置いてしまった事に後ろめたさのようなものがあった私は、思わず先生から視線を外してしまう。

とりあえず、きちんと挨拶だけして帰ろう。

そう思って、歩いてくる椎名先生に向かい、私も歩みを進めれば……


「──クッキーうまかった」


ありがとう、と。

すれ違いざまに聞こえた囁くような声。


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