初恋ナミダ。
第2章
*卒業生
「手作りもダメ、か」
──昼休みの保健室。
保健委員の仕事の為、正方形のテーブルに向かい合って作業をしていたら聞こえてきた声。
多分、独り言だろう。
けれど、それを発した人と、内容が内容なだけに聞き流すことが出来ず。
「タルトケーキのことですか?」
私は、青い布張りの執務椅子に座る養護教諭の宝生先生に話しかけた。
すると、宝生先生はくるりと椅子ごと私の方へと向いて。
「そっか。宮原さん、昨日あの場にいたのよね」
程よく艶のある唇を動かし、すらりと長く細い足を組む。
「そうなの。椎名先生に食べてもらえなかったのよね」
僅かに肩をすくめる宝生先生。
口振りは愚痴っているようだけど、浮かべた表情は笑んでいて何だか余裕そうだ。
でも……そうなんだ。
椎名先生、あんなに美味しそうなケーキをもらったのに食べなかったんだ。
だけど……
『──クッキーうまかった』
私のは、食べてくれた。