初恋ナミダ。
舞子も両親も頑張ってる。
私も、頑張る家族の為に頑張るんだ。
でもね、誰もいない家に帰るのはやっぱり寂しいから。
──放課後、私は今日も図書室の扉を開き、新着図書のコーナーから文庫本を取ると、お気に入りの席に腰掛ける。
陽射しを受けた席はほんのりと温かく、私はリラックスしながら本の表紙を開いた。
目で活字を追いながら、まったりとした時間を過ごす。
少し首が疲れてきて、身体をほぐそうと伸びを試みた時だった。
カラカラと図書室の扉が開く音がして、なんとなくそちらに視線をやると。
「……あれっ」
まさかの椎名先生が入ってきた。
椎名先生は図書委員の子に軽く会釈をすると、規則的に並んだ本棚の方へと移動する。
目的の本があるか、先生は目で探しながら、徐々に私の座る席の方へと寄ってきた。
この距離なら大きな声じゃなくても届くはず。
そう思い私は、勉強している他の生徒の邪魔にならないよう「椎名先生」と声を発し手を振る。
すると、なぜか。
先生は私を驚いた様子で見つめたまま動きを止めてしまった。