初恋ナミダ。


「──な、せ……」


形のいい唇が、言葉らしきものを紡いだけど。


「先生?」


よく聞き取れず、私は首を傾げる。

それでも椎名先生は立ち尽くし固まったまま。

ただ、その瞳は動揺に揺れている。


どうしてしまったのか。

とにかく、私がもう一度「椎名先生」と呼ぶと、先生はようやく我に返ったようで。


「──あ、ああ……悪い。どうした?」

「どうしたはこっちのセリフ。大丈夫ですか?」


尋ねると、椎名先生は「大丈夫だ」と口にした。

けれど、椎名先生の瞳にはまだ戸惑いのようなものが浮かんでいるようにも見える。


「本当に?」

「……本当だ」


とか言ってるけど、何だか歯切れが悪いじゃんと思っていたら。


「それより丁度いい。この前の小テスト、ひどい点数だったな」


嫌な話を切り出されてしまった。

ううん、上手く逸らされたのかもしれない。


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