初恋ナミダ。
「それで?」
「──え?」
突然、何かを尋ねられて。
でもそれが何を指しているのかわからずに首を傾げると、椎名先生は「怪我は?」と聞いてきた。
そういえば、最初に質問されたんだっけ。
私は足ふみしてみたり、ほぐすように足首をまわしてみたりして痛みを確かめる。
「特に痛くないかな」
「そうか。今後は気をつけるように」
「はーい。ありがとうございました」
忠告に返事をし、助けてもらったことに礼を告げる。
すると、椎名先生は私の横を通り過ぎる際、大きなその手を私の頭に乗せて優しく撫で、さっき間近で感じたコロンの香りを残し階段を下りていった。
私は、撫でられた頭に自分の手を乗せる。
……ちょっと、驚いた。
私の中の……というか、ほとんどの生徒の中にある先生のイメージは、真面目でクールな印象だろう。
だから、こんな風に軽くでも頭を撫でられるなんて想像もできなかった。
なんだか胸の奥がくすぐったくて。
私は制服のブレザーの上から胸元をそっと押さえながら、首を長くして待っているだろう幼なじみの元へと再び歩き出したのだった。